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November 25, 2004

地域に生きる市民としての企業

戦略的フィランソロピー。
自社の利益にもなる社会貢献を戦略的に打ち立てていくその姿勢は、以前シスコの例を用いて書いたように地域に根付いた活動として現れる場合も多い。
それが、『企業市民』だ。

民間企業の本質は利益追求事業体だが、その活動は取引先や出資先だけで成り立っている訳ではない。
特に製造業ともなると、工場を構える地理的土地を基本として、そこに働く従業員や関連各工場など周囲の環境との強力や調和が、活動の根底として求められる。

とくに大規模災害時など、企業が地域に果たす役割は大きい。
避難スペースの確保や重機類工具の提供といった貢献が期待され、
反対に地域住民や環境のサポートがあって企業活動も再開できる。

そういった意味で、民間企業と言えどその地域に生きる住民の一人であり、『企業市民』という言葉がある。

少し特殊な例にはなるが、私が災害ボランティア体験イベントで実感したTOYOTAという企業が地域において展開している活動について触れてみたいと思う。


トヨタという企業は年間150億円もボランティア活動に投じている。
各種講演会の開催や人の派遣、啓蒙活動など様々な活動の中で、今回の災害ボランティア体験イベントがその一つとしてある。

これはトヨタ関連13社が合同で開催し、社員や地域の人に災害時にどう対応しなければならないかを啓発するイベントだ。
2日間に渡り著名人の講演、グループワーク&発表、炊き出し、ボランティアセンター設営、消化活動救助活動体験、災害弱者付き添いボランティアといったメニューをこなす。夜は寝袋を持ち込み体育館で寝る。食事は全てハイゼックスやカンパンといった非常食だ。総勢350名が参加した。

昨年の同活動より以下の点で遥かに規模が大きい。
・災害時ボランティアセンターの設営において、本部以外に支部を2つ立ち上げ、センター間でのやり取りも演習した。
・車椅子や障害者、高齢者といった災害弱者を呼び、仮想災害時コースを回ってもらい体験してもらうと同時に、健常者による付き添いも体験する。非常時にそういった人を救助する訓練にもなる。

広大な敷地にあるトヨタスポーツセンター全体を巡るコース設営や、実際にはしご車や消防車、起震車(揺れて地震を体験できる車、現在大人気で数ヶ月の予約待ち状態)を出動させるところを見ると、ケチな金の掛け方をしていないことが分かる。

トヨタはどうして莫大な金をかけてまでこういった活動をするのだろうか。

理由は2つ。
地域への貢献と、自社への利益、だ。

地域への貢献についてはその内容が想像できるだろう。
大地震を経験したことがない地域に住む人達に、災害時はどうやって行動したらいいのかを、知識と実際の活動の両方を提供することで伝えていく。
実際に備蓄や耐震補強をする人も増えるだろう。
地域全体にそういった知恵を伝えていくことでボランティア等の機運も高まり、地域の防災力が向上する。
結果的に大規模災害が起きても、死者や家屋倒壊数など被害が軽減する方向へ向かう訳だ。

そしてそういった活動は同時にトヨタ本体へも利益をもたらすこととなる。

まず、地域に住む人が同時に従業員でもある点だ。
地域に住む人が助かる=自社の従業員が助かる、という図式が成り立ち、災害時における対応を早め特別損失を大幅に減少させることができるだろう。

そして、今回のボランティアセンター設営を行っているのもトヨタ関連企業社員だ。開催側にとってこれも一つの訓練である。
つまり有事において、自分たちでボランティアを組織し派遣する機能を確立し、お上による公設民営型の同センターと連携を取りながら自分達で自分達の活動へ責任を持って補佐を行っていく能力を高めていると言える。

そしてそれが、企業活動の維持へ繋がる。
看板方式の採用によって在庫保持リスクを限界まで小さくしているトヨタにとって、最も損失を与えるのは関連各企業の活動が停止することだ。ある部品の供給が停止するだけで、在庫がない分すぐさまモノの流れが止まり全体の企業活動が停止する。災害時にトヨタが最も恐れるのは、関連各企業の活動がどこかで止まってしまうことだ。
車というのは何万もの部品によって組み立てられる超複雑な機械構造体だ。従って逆に言うと、トヨタは何百もの関連各企業の活動をサポートしてやらなければならないことになる。大規模災害時においてもその活動が停止しないよう事前準備を促進させる必要があるのだ。

そしてそういった企業の活動は大中小を問わず地域によって支えられている。
つまり、地域に貢献し、市民としての企業と地域住民や環境との連携を普段から強化し、有事には貢献し逆に協力してもらうことで、自助共助の相乗作用によって企業活動の復興を急ごうという狙いなわけだ。

これこそが、地域貢献を行う『企業市民』の在り方であると、俺は思う。

豊田市は少々例外的な町で、トヨタ関連企業が支配的な存在であるためこういった活動が一貫して定着しやすい。
他の場所で色々と活動を行おうと思っても、多くの参加者を全体効率性にそって集めるのは至難の業だろうし、そもそも関連の無い企業同士で共通の活動を実施することに無理がある場合もある。時に利害が相反するからだ。

しかし実情はどうあれ、企業活動が同活動地域の支援や協力によって支えられている事実は変わりない。
周囲の理解を得られなければ、そこで活動することすら許されないのだ。

企業とは、金を稼げばイイ存在、とは思っていないだろうか。
最近になってようやくCSRといった考え方が広まり、企業が社会において果たす責任に注目が集まるようになったが、それがニュースになるようではまだまだ定着は先の話だろう。

国という土地の上に存在し、地域に住む人がそこで活動する以上、利益追求体として単体で存在することはもはや不可能だ。
そもそも古来からの地域の経済活動は地域一体となって行われてきたハズだが、都市化や国際化が加速する流れの中でそういった公の意識が希薄になってきたのではないだろうか。

俺ら個人が責任を持ちながら社会に生活する権利を獲得しているのと同様、企業もそうなんだ。
独占利益を求めるだけでは結局豊かになれはしない。貧しい取引相手ばかりの中でどうやって利益を伸ばす?
目指すべきは、地域と協働することで得られる相乗効果的な利益だ。

日本全体での経済活動活発化を目指していくためにも、これから企業で働く俺ら自身がそういった意識を持って社会に入っていかなければならない。
30年後の経済を創っていくのは俺らだ。
寡占独占による経済損失を生じさせるよりは、みんなで高め豊かになっていく国を目指しその中で生活することを夢見ていきたいと思う。
地域住民の一人として。

  

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Comments

おはつです。時々読ませてもらってます。
意見には全面的に賛成です。

ただ、ちょっと思ったんだけど、例えば地域に密着していない企業って、どうなんだろね。東京にある企業とかに多い気がするんだけど。こういう企業って、利益をどうやって還元したらいいんでしょか。環境への配備?福祉への投資みたいなことなんでしょか。こういった場合、対象は地域に密着した人々じゃありませんと。じゃあ、トヨタのような地域住民が絡んでくる相乗効果って生めるもんなんかなーと。少し考えたけど難しい問題やね。。カッキーはどう考えます?

Posted by: takayuki | December 04, 2004 10:37 PM

まぁなんて難しくて素敵な投げかけ☆さんきゅ~☆

んー結局社会貢献ってのは企業活動に関連させて行うべきではないかと思います。それは戦略的フィランソロピーの概念が示すところで。つまり地域住民に対して直接サービスを行わない企業が無理して投資を行っても、売名行為にはなっても、明確な当該企業の利益に直結しない限り行うべき理由が明確ではないし、株主からの批判も出るでしょう。

考えられるのは、東京本社のみで、地方に工場も持たず、法人相手にサービスのみを提供する経営コンサルタントなんかがそれに当てはまるかな。

その場合は①最大の経営資源である人を守るために、社員用の耐震設計マンションを建設し社員の命を守り、かつ地域住民も入居できるようにして地域貢献とする→でも減損会計導入とは逆行する流れだから多分不可。。。②提案する経営戦略の中に顧客企業が果たすべき相乗効果的地域貢献の要綱を盛り込む→知恵を売る企業として間接的な貢献ができる。しかしコンサルタントの名前を公表したがらない日本の風習にマッチするかどうか。。。

とまあ色々考えられるかもしれないけど実益に結びつけるのは難しいなぁ。でもこれは間違いなく今後の企業活動の要の一つになると思ってます。地域との共生を図れない企業は生き残れない。人間らしさを忘れた生活を営む今の世界・企業活動に対する疑問であり挑戦です。

Posted by: かき | December 07, 2004 03:56 AM

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